旅する世界のティータイム。世界各国の人々はどのようにお茶を楽しんでいるのでしょうか。
今回の舞台は、世界に名立たるお茶産地、台湾。台中在住のライターが、歴史ある台湾茶の最新事情をご紹介します。
【レポートしてくれた方】
Shizuka Nitta
台湾人の夫と出会い結婚し、3年前に台湾移住。現在は、子育てをしながら、オンラインツアーガイドやライターとしても活動中。
移住して驚いた台湾式の「おもてなし」
私は台湾人の夫に出会い、3年前に台湾へ移住してきました。そこで感じたのは、台湾人にとってのお茶は生活の一部で、自然と暮らしに溶け込んでいるということ。なかでも私が魅力を感じる文化に、来客をお茶でもてなす「奉茶」と呼ばれる風習があります。今年の旧正月には夫の叔父の家に行き、「奉茶」で台湾式のおもてなしをしてもらいました。
ホストの義叔父はお茶が趣味で、飾り棚にはこだわり茶器のコレクションもたくさん。今回の訪問では、出張先や旅行先で集めた茶葉を数種類選んで飲み比べをさせてくれました。同じ茶葉でも新茶と数年寝かせたものでは味が異なり、集まった親戚で「私はこっちの香りが好き」「このすっきりした味がいい」などと台湾茶品評会のような一幕も。義叔父はゲストのカップが空になったら手慣れた様子でお茶を注ぎ足してくれ、楽しくおしゃべりしながら心温まるひと時を過ごしました。
親戚宅での団らんの様子。義叔父がお茶をふるまってくれます
大根餅(左)やナッツ(右)は台湾で親しまれる定番お茶請け
街中にあふれる「奉茶」精神
お茶でもてなす「奉茶」の文化は街中で見かけます。亜熱帯に位置し、暑い日が続く台湾では水分補給が不可欠。郵便局や銀行、寺などには「喉が渇いたらご自由にどうぞ」と、無償提供のお茶やウォーターサーバーなどが設置してあります。最近は、街中の水飲み場を探せる「奉茶」スポット検索アプリまで登場し、話題を呼んでいます。
左:テイクアウトのフライドチキン屋さんの店先にある無料のお茶サーバー
右:百貨店にあるウォーターサーバー。冷水、熱湯、常温とお湯の温度も選べます
ドリンクスタンドもデリバリーが主流に!?
もう一つ、台湾の文化ともいえるのが、タピオカミルクティーでおなじみの「ドリンクスタンド」です。街の至るところに存在し、お値段もリーズナブル。コンビニ感覚で多くの人が立ち寄り、Lサイズは700ml、Mサイズでも500mlという大きなカップを片手に街を歩く姿が当たり前です。台湾生活も3年を超える現在では、若者が1日2杯もそのビッグサイズドリンクを飲むと聞いて驚いたことが遠い昔のようです。
台湾のドリンクスタンドのメニューはミルクティーのみならず、台湾茶にレモンやパッションフルーツ、タピオカやプリンを入れたもの、乳酸菌飲料と合わせたものなどバラエティー豊か。甘さや氷の量もカスタマイズできるので、季節や体調に合わせて楽しめます。
街中で飲むだけでなく、デリバリーすることもしばしば。我が家でもフルーツ入りの台湾茶や、タピオカやプリンが入ったものをデリバリーするのが定番です。特に若い人たちは、デリバリーをよく利用しているようです。
左:台湾のドリンクスタンド
右:台湾茶のミルクティーに焼きプリンをトッピングしたスイーツドリンク
お茶はマイボトルで持ち歩く
台湾では、ドリンクスタンドでお茶を買うのもポピュラーですが、もちろん茶葉から台湾茶をいれて楽しむことも一般的です。自宅やオフィスなどでは、ティーバッグで手軽に台湾茶を楽しむ人も。ティーバッグはスーパーやコンビニで手軽に安く手に入り、種類も豊富。特に「凍頂烏龍茶」や「東方美人」が人気です。
現在の台湾人はエコ意識がとても高く、マイドリンクを持ち歩く人がほとんどです。マイドリンクホルダーとマイストローを常備することが当たり前になっていて、大きなドリンクカップを入れたマイドリンクホルダーをお供に、街を歩く姿が日常的に見られます。
先述の通り、奉茶精神が根付く台湾では、駅や学校、公園やオフィスなどに温冷完備のウォーターサーバーが設置されているので、そこで好きなティーバッグをタンブラーに入れて自分だけの1杯をいれることができます。
烏龍茶など大きめの茶葉であれば、ティーバッグではなく茶葉のまま、カップやタンブラーに入れてお湯を注ぐだけという、とても手軽な楽しみ方も一般的。オフィスに着いたらまず1煎目。飲み終わったらお湯を追加して、2煎目、3煎目と退社時間まで楽しめるのは、大きな茶葉を丸めて作る台湾茶の特徴ゆえ。味や香りの変化も楽しみながらリフレッシュできます。
台湾人はマイドリンクホルダーとマイストローで、飲み物を持ち歩くのが当たり前
進化し続けるお茶の国
お茶の国・台湾では次から次へと新しい台湾茶が生まれ続けています。最近では、炭酸が心地よいスパークリングティーや、甘じょっぱいチーズクリームを浮かべた台湾茶などが流行っています。夜市では、なんとガソリンスタンドを模したドリンクスタンドが出現!セルフ給油のようにミルクティーを入れられるエンターテインメント性が受けています。
左:夜市に登場したセルフ給油風のドリンクスタンド
右:チーズクリームティー
家族や仲間との団らんの一杯から、進化し続けるユニークな一杯まで。台湾茶は老若男女を問わず、さまざまな人々の暮らしに溶け込み、楽しまれています。皆さんもぜひ、気軽に台湾茶を楽しんでみませんか?日本から近い国、台湾をもっと近くに感じていただけるかもしれません。
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