ダージリン ファーストフラッシュは、今年のシーズン到来の合図
ダージリンでは、春、夏、秋と年に3回の旬を迎えます。ファーストフラッシュは春摘みの紅茶を指し、その年の初めに摘まれる、いわば「ダージリンの新茶」です。
インドの代表的な紅茶産地と特徴
インド・ダージリン
インド北東部のヒマラヤ山麓に広がる高級紅茶産地。品質が向上する旬は春、夏、秋の年3回。
インド・アッサム
黄金に輝く新芽と、甘くコクのある味わいが特徴の6~7月頃に摘まれた夏摘み紅茶が有名。
インド・ニルギリ
主に高山エリアで1~2月頃に摘まれた紅茶は、南国の果実のようなみずみずしい香りと、甘みが凝縮したクオリティーとして知られています。
知れば知るほど、おいしく飲める “紅茶の旬”にまつわる2つのこと
紅茶の旬=クオリティーシーズンはバラエティー豊か
日本茶の旬といえば新茶の時期を指しますが、紅茶の世界はもう少し複雑です。紅茶は、主に亜熱帯から熱帯の地域で栽培されるため、産地によって収穫期間や回数など旬の捉え方が異なります。紅茶を生産するのに、最も風味が際立つ時期=クオリティーシーズンを知ると、いつもの紅茶がますますおいしく楽しめます。
ダージリン ファーストフラッシュとは、春摘みの一番茶のこと
日本茶の一番茶を新茶と呼ぶのに対して、春に摘まれた紅茶の一番茶は、ファーストフラッシュ(First Flush=1st )と呼ばれています。ファーストフラッシュと聞いて、すぐにダージリンを思い浮かべる人はなかなかの紅茶通。「ダージリンの新茶」であるファーストフラッシュは、いわゆる紅茶らしい風味というよりも繊細な滋味やみずみずしさが香り、緑茶のような青々とした茶葉でありながら、お茶を注ぐと黄金色という驚きの特徴があります。一方でダージリンのセカンドフラッシュ(夏摘み)は、味・香りともに芳醇で厚みのある味わい。さらにオータムナル(秋摘み)になると華やかさがありながら渋みが少なく、最も甘みが際立つなど、旬ごとに味わいが異なります。
お茶作りの名人に聞いてみました。新茶を楽しむコツってありますか?
キャッスルトン茶園
Raj Kumar Sinhaさん
インド・ダージリンで最も名高い茶園とされる「キャッスルトン茶園」のマネージャー。ダージリンの有名茶園で経験を積み、茶業界で30年以上のキャリアを持つ。
「茶は単なる仕事ではなく、情熱である」と語る。
ダージリンティーの最大の魅力は、その〝ユニークさ〞です。茶園が隣接していても、同じ品質や特徴を持つ茶園は二つとなく、一軒一軒に、独自の特徴と香りがあります。
加えてダージリンティーは、季節ごとに香りや水色が変化するお茶であり、樹齢100年以上の茶の木から収穫された葉から生まれるその味は、幾多の歴史とロマンをも感じさせます。
そのおいしさを届けるために、収穫のない冬期間に除草を行うなど、丁寧にお世話をして、茶樹に十分な休息を与えることがとても重要です。ファーストフラッシュとして収穫された茶葉は、最もやわらかく、新生児を扱うようにやさしくケアします。摘採、工場への輸送、萎凋(いちょう)の過程で葉を傷つけないように、細心の注意を払います。やさしく葉を広げて発酵させ、風味を閉じ込めるための温度にも配慮します。
ダージリン ファーストフラッシュは、お茶のテイストがとてもフレッシュで軽やかなのが魅力です。春の新葉のような繊細な香りと、みずみずしい花や果実のアロマを実際に感じることができます。水色も淡く、やわらかな甘みをそなえた心地よい渋みが特徴です。
一日の最初の一杯にぜひ飲んで
私の場合、ファーストフラッシュのシーズンには、一日の最初の一杯から始まり、そして一日の締めくくりにもファーストフラッシュを飲んで楽しんでいます。砂糖やミルクを入れずにストレートで。少し塩気のある食べ物やスコーンと一緒に味わうのがベストです。