新緑のまぶしい季節、心も晴れやかに過ごしたいと思いつつ、どこか心から楽しめない……。
自粛や我慢が続く生活は私たちの心にも影響を与えています。今月号は「香り」に注目。
香りを取り入れて、ストレスをためない毎日を目指しましょう。
お茶の香り成分
今年も新茶の季節がやってきました。寒い冬に栄養分を蓄えたお茶の木が一斉に芽吹き、その新芽だけを摘み取って作る新茶は香り、味ともに格別です。特に、新茶ならではの生命力を感じる力強い香りは、この時期だけの特別なものです。
お茶の香りは、様々な香り成分が混ざり合っています。その数なんと300種類以上。青々とした爽やかな香りは、主に「青葉アルコール」によるもので、他にも花のような香り成分「リナロール」「ゲラニオール」などがお茶の主な香りを形成しています。
これらの香り成分はリラックスに繋がることが分かっています。そのため、お茶の香りを嗅ぐと心が落ち着くと感じるのです。
香りは脳に効く?
香りがどうして私たちの心に作用するのか? その秘密は脳にあります。嗅覚は、視覚や聴覚などの五感の中で唯一、大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)に直接伝わる感覚です。大脳辺縁系は、本能的な行動や喜怒哀楽などの感情を司るところ。つまり、香りは感情に直接作用すると言い換えられます。
「香りは大脳辺縁系から、自律神経やホルモンの分泌などを司る視床下部(ししょうかぶ)へと伝わります。そのため、香りは心と体に作用する」と医学博士の塩田清二(しおだせいじ)先生。また、「ストレスに大きく関わるのが自律神経です。交感神経と副交感神経がうまく一日のバイオリズムを刻むことが大事。香りは自律神経に働きかけられるため、ストレスにアプローチできる」とおっしゃいます。
ストレスを解く鍵
ストレスと一言でいっても、その状況によって効果的な香りは異なります。日本アロマ環境協会の熊谷千津(くまがいちづ)さんは、「ストレスを感じて体が緊張状態にある場合は、副交感神経を刺激するリラックス作用のある香りが効果的。例えば、ラベンダーやローズの香りです」とおっしゃいます。
一方で、ストレスが蓄積して意欲が減退している場合、「交感神経を刺激するリフレッシュ作用のある香りがおすすめ。例えば、ペパーミントやグレープフルーツ、レモンなどです」(熊谷さん)。ストレスの状況に応じて香りを選ぶことで、ストレスと上手く付き合うことが可能になります。
香り選びで重要なのが、好きな香りを選ぶこと。「好きな香りだと心身の反応も良くなることが科学的にも分かっています。嗅覚は本能的な部分と直結しているため、好きだと感じる香りを心身が求めているのかもしれませんね」(熊谷さん)
お茶本来の香りを楽しめるクラシックなお茶や、フルーツや花の香りのフレーバードティー、ハーブティーなど、「香りのチカラ」に注目するとお茶選びの楽しさが広がります。好きな香りのお茶を飲みながら健やかな毎日を送りましょう。
お話を伺った方
熊谷千津(くまがいちづ)さん
公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)理事長。アロマサイエンス研究所所長。農学博士。薬剤師。
リラックス? リフレッシュ? 気分に合わせて香りを選ぼう
ルピシアのたくさんのお茶の中から、「リラックス」「リフレッシュ」
それぞれの気分に合うおすすめの香りを塩田清二先生に選んでいただきました。
リラックスにおすすめの香りでは、ジャスミンの香りに圧倒された「茉莉春毫」を真っ先に選びました。お茶本来の香りが感じられる緑茶と焙じ茶も良いですね。リフレッシュには柑橘の爽やかな香りや、ミントの清涼感が際立つお茶がおすすめです。
お話を伺った方
塩田清二(しおだせいじ)先生
医学博士。著書に『〈香り〉はなぜ脳に効くのか アロマセラピーと先端医療』(NHK出版新書)など。
リラックスしたいときにおすすめ
ジャスミンの華やかな香り広がる
茉莉春毫(モーリーチュンハオ)
中国緑茶をベースにした、最高級のジャスミンティー。春風のような芳香です。
ホッとする香ばしい風味
焙じ茶「鬼の焙煎」
深みのある香ばしさと豊かな甘み。焙煎師がこだわり抜いた二段階火入れの焙じ茶です。
新茶ならではの豊かな香り
知覧新茶 ゆたかみどり 2023
サツマイモを思わせるほっこりした甘みが人気の知覧新茶。深蒸し製法による、まろやかな味わい。
※今年は終了しました
リフレッシュしたいときにおすすめ
柑橘の爽やかな香りに包まれる
アールグレイ
祁門紅茶をベースにベルガモットの爽やかな香りをつけました。ストレートでもミルクでも。
スッキリとした爽やかな香り
ミントティー
清涼感あふれるドライペパーミントをたっぷりブレンドした爽やかな紅茶です。
柑橘の香りをまとったルイボス
アダージオ
グリーンルイボスにグレープフルーツの香りとレモングラスをブレンドし、爽やかな味わいに。
お茶の香りを楽しむポイント
少し意識するだけで、お茶の香りをさらに味わえるポイントをお伝えします。
POINT 1
「旬」の時期だけの香りを知る
新茶には爽やかな香り成分が複数含まれていることから、若葉特有のフレッシュな香りを楽しむことができます。旬の時期だけの香りをお試しください。
POINT 2
茶葉をおいしく保存する
お茶は開封すると、酸素や湿度、温度などの影響を受けて風味が落ちてしまいます。開封したお茶はできるだけ早く飲み切ってしまうことをおすすめします。保存する場合は、なるべく密閉容器に入れ、湿気の少ない涼しいところに置きましょう。
POINT 3
茶器の形に注目
香りを楽しみながらお茶を飲むなら、口の広い茶器がおすすめ。香りが広がりやすく、味わいとともに香りを楽しむことができます。
POINT 4
茶香炉(ちゃこうろ)で楽しむ
茶葉を熱して香りを出すことができる茶香炉。緑茶だけでなく、烏龍茶や紅茶などお好みの茶葉でお試しください。お茶の穏やかで優しい香りがお部屋に広がります。
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私たちの心を健やかに保つヒントを探しに、香りの専門家にお話を伺いました。
今年はお茶で「旬」を暮らしに取り入れてみませんか?
旬を味わい、季節を感じる。それだけで、日常がほんのり色づきます。旬のお茶で、いつもの時間を「ちょっといい時間」に。