おうち時間が増える中、手軽なペットボトルやティーバッグばかりでなく、あえて急須でお茶をいれてみたいというお声をよくいただくようになりました。 そこで今回は、初めての方でもわかりやすい「基本のいれ方」を、新茶の魅力とともにご紹介します。
封を切る瞬間の香りにも注目
新茶の魅力は、何と言っても青々としたフレッシュな香り。買ったばかりの茶葉の袋を開封する時は、開けた瞬間の香りにも注目。袋いっぱいに充満している青い若葉の香りを、思い切り深呼吸して堪能しましょう。この爽やかな香りが楽しめるのは、1年の中でも摘みたての「今」だけです。
ポイントは「茶葉の量」と「お湯の温度」
日本茶をおいしくいれるポイントは、①茶葉の量と②お湯の温度の大きく2つ。この2点を意識するだけで、おいしさが格段に変わります。
①茶葉の量
湯のみ1杯(150ml)のお湯に対して、茶葉4~5g(茶さじ1杯)が目安です。
>茶葉を量るのに便利な茶さじ(ドザール)はこちら
②お湯の温度
煎茶は、ひと冷まししたお湯(70~80℃)でいれるのがおすすめ。渋みを適度に抑えつつ、茶葉の甘みや旨みを十分に引き出すことができます。
【豆知識】お茶と温度のおいしい関係
お茶はいれる温度によって浸出する成分が変わります。旨みや甘み(テアニン)は低温でも浸出しますが、渋み(カテキン)は低温では溶け出しにくい成分。新茶の特徴である濃厚な旨みや甘みを存分に引き出すには、ひと冷まししたお湯でいれるのがおすすめです。
ただ、お茶の好みは人それぞれ。心地よい渋みを楽しみたい時や、爽やかな香り立ちをより楽しみたい時は高温(85~100℃)でさっといれるのがおすすめ。特に、焙じ茶や玄米茶の場合は、熱湯でいれるとよりこうばしい香りが引き立ちます。渋みが出すぎないよう、蒸らし時間は短めに。
「湯冷まし」ってどうやるの?
70~80℃のお湯でいれると言っても、もちろん、厳密に温度を計る必要はありません。お湯の温度は、別の器に移すたびに約10℃下がるので、これを利用すれば簡単です。
沸騰したお湯は直接急須に入れず、まずは人数分の湯のみに注ぎましょう。そうすることで、湯温が下がると同時に湯のみも温まり、お湯の適量も量れますので一石三鳥! 次に、湯のみでひと冷まししたお湯を急須に移せば、さらに湯温が下がって適温のお湯でいれられます。 湯冷ましが面倒な時は、熱湯と水で適温のお湯を作るのもおすすめ。急須に大さじ1杯(15ml)の水を入れ、上から熱湯を加えて全体で約150ml(1杯分)にすると、約80℃の適温になります。
基本のいれ方
では、日本茶(煎茶)の基本のいれ方を流れでご紹介します。
(1) 沸かしたてのお湯をいったん人数分の湯のみに注ぎ分け、ひと冷ましします。
(2) 急須に人数分の茶葉を入れます。湯のみ1杯(150ml)のお湯に対して茶葉4~5g(茶さじ1杯)が目安です。
(3) (1)でひと冷まししたお湯を急須に注ぎ、45秒~1分半蒸らします。お茶ごとの蒸らし時間の目安は、各お茶のパッケージに記載しています。
(4) お茶の濃さが均一になるよう、それぞれの湯のみを往復しながら注ぎ分けます。
(5) 最後の一滴には旨みが凝縮しているので、しっかり注ぎ切りましょう。急須の中にお湯を残しておくと、2煎目のお茶が渋くなるので注意。
【2煎目をおいしくいれるコツ】
1煎目のお茶を注ぎ切ったら、急須の側面を手のひらでポンと叩きます。そうすることで、注ぎ口に偏っていた茶葉が中央に戻り、2煎目のお茶も目詰まりせずに注げます。茶葉が蒸れすぎないよう、急須の蓋は少しずらしておきましょう。
また、2煎目はすでに茶葉が開いているので、1煎目よりも短時間でいれるのがおすすめです。
写真左:急須の側面を叩く前。茶葉が注ぎ口に寄っている。
写真右:ポンと叩いた後。茶葉が中央に戻る。
「いれる時間」を楽しんで
丁寧に茶葉を量ったり、慌てずひと呼吸置いて湯冷まししたり……。あえて手間を楽しむように、暮らしの中でお茶をいれる時間を作ってみませんか?
おいしいお茶をいれることだけに集中していると、頭の中を空っぽにできます。一日中家にいると、オンとオフの切り替えが難しくなりがちですが、お茶をいれることで生活にリズムができたり、気分をリフレッシュすることができます。
年に1度の新茶の季節。茶葉の封を切るところから、ゆっくり丁寧にいれる時間、おいしく味わうところまで。思う存分、満喫し尽くしましょう!