南インドを代表する紅茶の名産地「ニルギリ」。昨年1月、茶葉の買い付けを担当するルピシアのバイヤーチームが、現地を訪問しました。茶園の広がる景色や暮らしの様子、産地・ニルギリの魅力をお届けします。
世界的な紅茶産地ニルギリ
現地語で「青い山」を意味するニルギリ。南インドを代表する紅茶の名産地です。お茶の名産地として知られるインド・アッサム地方や、中国・雲南省などと気象条件が近かかった南インドでは、19世紀頃、高原地帯を中心に茶樹が植えられ、紅茶の生産が始まりました。中でもニルギリは、今やダージリン、アッサムに並ぶ紅茶の名産地として、世界的に知られています。
2020年1月、私たちルピシアバイヤーチームは、そんな南インド・ニルギリに向けて出発しました。日本から約12時間もの移動を経て、私たちが最初に降り立ったのは、インド・ケーララ州の中心都市コーチです。ケーララは一年中温暖な気候に恵まれた、世界的にも有名なリゾート地のひとつ。バナナやヤシの木に囲まれた南国情緒あふれる雰囲気から、“南インドの桃源郷”とも呼ばれています。1月にも関わらず気温は30℃を超え、空港から出る頃には、汗が滲むほどでした。
茶園に囲まれた町の賑わい
車に乗り継ぎ、いざニルギリへ。いくつかの丘陵を越え、ヤシの木が並んでいた街並みは、いつの間にか山岳地帯の風景に変わっていきます。標高が上がるにつれ気温は下がり、コーチの気候とは一転、慌てて上着を取り出しました。
しだいに、車窓からはニルギリの大きな特徴ともいえる、急斜面に広がった茶園が見え始めます。最初の目的地はニルギリの玄関、クーヌールの町。茶園にすっぽりと囲まれた山あいに位置する田舎町です。クーヌールのマーケットでは色とりどりの果物や、エキゾチックな香りの香辛料を求める地元の人たちで賑わい、活気にあふれていました。
クーヌールには「トイトレイン」の愛称で親しまれる、世界遺産「ニルギリ山脈鉄道」の駅があり、地元の方や観光客、多くの人が集まっていました。駅のそばにはティースタンドもあり、小さなティーカップを片手に、談笑する姿があちこちで見られます。発車までのわずかな待ち時間にも、家族や友人との会話を楽しむ、穏やかな時間が流れていました。
発車の間際、煙がもうもうと立ち昇る蒸気機関車。汽笛が鳴り響きます。記念にとカメラを構えると、車窓から「ヘイ!」と呼びかける声が。なんだろう?と思い歩み寄ると、「僕たちも撮ってよ!」と向けられた、屈託ない笑顔とピースサイン。旅客にも気さくに話しかける人懐っこさや朗らかな空気感に、思わず和んでしまったひとときでした。
いざ、旬を迎えた茶園へ
さて、私たちもクーヌールを出発し、いよいよ目的地へ向かいます。訪れたのは、ニルギリでも特に品質の高さで注目されるハブカル茶園です。私たちが現地を訪問した1月中旬は、ちょうど旬のニルギリ紅茶の収穫が始まる、シーズンの序盤。茶葉の出来や製茶の様子を実際に見学させていただくことが、今回の旅の一番の目的でした。
出来立てのお茶をテイスティングさせていただくと、爽やかで生き生きとしたクオリティーフレーバー(旬ならではの風味)が感じられました。旬の訪れを実感できる味わいに、自然とみんな顔がほころびます。
テイスティングの後、ハブカル茶園のオーナー ジャヤラマンさんにお話を伺いました。ジャヤラマンさんは、周囲のニルギリの生産家たちからも厚い信頼を寄せられるほどに研究熱心な方。なんと、静岡でお茶作りの研修に参加されたこともあるそうです。日本からの訪問者である私たちを熱烈に歓迎してくれました。
ジャヤラマンさんによると、現在ニルギリでは、「さらなるおいしさを追求して、新しい品種の茶樹も積極的に植えている」のだとか。そのため、ニルギリの茶樹は全体的に樹齢が若く、生き生きとしたパワーにあふれています。「少しでも品質を高めたいと試行錯誤するこのエネルギーは、ほかのどの産地にも負けないと思うね!」とジャヤラマンさんは力強く話してくれました。その熱意に感銘を受け、ついつい止まらなくなるお茶談義。ニルギリならではの生命力あふれる風味には、もっとおいしいお茶を届けたいという作り手の情熱が込められているのだなと実感しました。
この春も旬の味わいが到着
近年、特に品質が上がり、世界的に注目を集めているニルギリ。この旅の中で、改めてニルギリという産地、生産者の皆さんの魅力に触れることができました。現地で感じたそのパワーを、次はお客様の元においしいお茶としてお届けすることが、ルピシアの役目です。昨年同様、今年も格別の味わいに仕上がった、旬のニルギリ紅茶をご用意しました。これからも、おいしいお茶はもちろんのこと、世界中の産地・茶園の魅力もお届けしてまいります。