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ルピシアの人気シリーズ「ブック オブ ティー」は、毎回、そのデザイン性の高さも大きな話題となります。「お茶とめぐる想像の旅」をテーマにした今回のデザインの裏側には、どんなエピソードがあったのでしょう?
担当デザイナーに聞きました。
旅の思い出を切り取る
――今回のテーマが「旅」と決まった時、担当デザイナーとして最初にやったことは何でしたか?
まずは、自分がこれまでに行った旅を振り返ってみましたね。ロンドン、インド、台湾、パリ、ニューヨーク、スペイン……。いろんな旅を思い出しながら、魅力的なビジュアルって何だろうと。そうしたら、チケットやスタンプ、ショップカードや拾った落ち葉などを結構たくさん集めているなぁと気づいたんです。写真も、街で⾒つけた⾯⽩い看板をたくさん撮っていたり(笑)。
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デザイナーが旅先で集めたチケットや貝殻、スパイスなどのコレクション。
――なるほど。それで旅の手帳にコレクションしたくなるような思い出たちを、ティーバッグのモチーフにしようと考えたのですね。
ええ。「旅」というと、どうしても地図や乗り物、観光地の建物などをダイレクトにイメージすると思うんですが、今回はもう少しマニアックというか、印象的な旅の思い出にフォーカスしてみたいと思いました。
――となると今回のデザインは、ご自身の旅での経験がだいぶヒントになっているんでしょうか?
実体験と想像、半々くらいですね。インドは昔、仕事で行きまして、ゾウのタクシーに乗って山の上のお城まで行くツアーを体験しました。今回「アッサム・カルカッタオークション」で描いた装飾されたゾウは、その時のイメージです。
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ティーバッグに描く難しさ
――やはり実際に見たり、体験したりしたことの方が描きやすいのですか?
いえ、実はそうとも限りません(笑)。私は南フランスが大好きで、エクス・アン・プロヴァンスのマルシェにも行ったことがありますが、「あの色々なお店がたくさん連なっている楽しいマルシェを描きたい!」と思っても、そうした広がりのある風景をティーバッグの小さな世界にどう表現するかが難しい。小さな枠に収めよう収めようとすると絵が窮屈になって、旅の楽しさやのびのびとした解放感が失われてしまうので……。
――そんな苦労があったとは……。でも悩んだ末に完成した「ラビアンローズ」のデザインは、賑やかなマルシェの雰囲気が伝わってきて、とっても素敵です。他にも、苦労したデザインはありましたか?
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「キリマンジャロ」のパッケージも、ケニアの壮大な景色のどこを切り取るかが難しかったですね。ずいぶんと悩んで、マサイ族の首飾りを手に取って、そこから大地を覗いているイメージにしました。あとは、「ネプチューン」のルーマニアも何を描くかなかなか決まらなかったデザインの一つです(笑)。
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――私はこの「ネプチューン」のデザイン、1、2を争うお気に入りです。イラストなのに太い刺繍糸の立体感とか、手仕事の温もりや素朴さが伝わってきて、ほっこりしました。「ネプチューン」のはちみつ漬けのフルーツの⾹りにちなんで、ルーマニアの特産物であるはちみつも描かれているんですよね。
はい。お茶との関連性はデザインする上で意識したポイントですね。「キケリキー!」では、ドイツ・ローテンブルクの装飾看板を描きましたが、「キケリキー!」はドイツ語で「コケコッコー」。だから風見鶏は入れたいなとか(笑)。
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――「マスキュラン」に描かれたパリ6区の通りの看板も、ルピシアのパリ店がある「ボナパルト通り」になっていたり(笑)。こういうデザイナーの遊び心に注目しながらパッケージを眺めるのも楽しいですね。
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表紙デザインに込めた思い
――今回、ボックスの表紙デザインは、「BOOK OF TEA」の文字が旅や世界各地にまつわるモチーフで表現されています。今までのルピシア商品にはあまりない手法で新鮮でした。
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タイポグラフィーという手法ですね。最初に提案した時は、私の中でも少し冒険でした(笑)。地図や乗り物などで、もっとわかりやすく旅を表現する⽅法もあったと思いますが、今回のテーマは「想像の旅」。ですから、お客様がご自身の解釈で色々な想像を膨らませられるような表紙にしたいと考えてチャレンジしました。
――表紙デザインでは、赤×黒×白の配色にもこだわっておられました。歴代「ブック オブ ティー」シリーズの中でも、赤い色というのは珍しいですよね?
そうですね。赤はとてもポジティブな色。エネルギーに満ち溢れている時や、逆にエネルギーを補給したい時に好きになる色なのだそうです。こんな時なので、皆さんに元気になっていただきたいなという思いで、今回は赤にこだわりました。小冊子を読みながらティーバッグを手に取って、「次はこんなところに出掛けたいな」なんてワクワクしながら楽しんでいただけたら嬉しいです。人に会えない、外出できないなど不自由な日々が続きますが、想像する気持ちだけは自由であってほしいと思います。
――私も全く同感です。せめて一杯のお茶を飲んでいる間は、自由に想像の旅で世界中を飛び回っていただきたいですね。今日はありがとうございました。
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今回のテーマは「お茶とめぐる想像の旅」。一体どんな内容になっているのでしょう?こんなにも自由に外出できない日々が長く続くと、「旅」と聞いただけで胸がわくわくしてきます。