この冬、お茶で健康に

ルピシアだより 2021.2 表紙

感染症などが気になるこの時期、お茶を取り入れながら、生活習慣を整えて強い体をつくりましょう。

ルピシアだより 2021.2 P3

お話を伺った方

医学博士 飯沼 一茂(いいぬま かずしげ)先生
1948年生まれ。立教大学理学部卒。大阪大学医学部にて医学博士を取得。米国製薬企業にリサーチフェローとして勤務。国立国際医療研究センター・肝炎免疫研究センター客員研究員、純真学園大学客員教授などを歴任。日本免疫予防医学普及協会講師。著書に『それでは実際、 なにをやれば免疫⼒があがるの?〜⼀⽣健康で病気にならない簡単習慣〜』(ワニブックス)などがある。

お茶でリラックス

 この冬は特に健康に気を遣い、感染症の予防をしている方も多いのではないでしょうか。気を張った生活がこれほど長く続くと疲れてしまいますよね。おうちで温かいお茶を飲んで、心を緩める時間も大切にしたいものです。

 お茶は私たちの気持ちをリラックスさせてくれますが、お茶の役割はそれだけなのでしょうか? お茶が健康にも良い影響を与えてくれたらもっとうれしい!そんな思いを抱き、日本免疫予防医学普及協会の飯沼一茂先生にお話を伺いました。

カテキンが体を守る

・手足が冷える
・朝スッキリ起きられない
・ドライマウスである
・目が乾きやすい
・おなかの調子が悪い

 この中で思い当たる項目はありますか? 「思い当たるものがあれば、免疫力が下がっているサインです」と飯沼先生はおっしゃいます。

 人間には外敵から身を守るために体に備わっている力があり、この力をいかに向上させるかが、健康維持に大きく関わってきます。飯沼先生によると、「免疫力を高めることでウイルスに感染しづらくなったり、感染した場合も重症化に至らなかったりという利点がある」とのこと。それでは、そのために私たちができることは何があるのでしょうか?

 まずは食事に関して、「過食は避けて、腸内細菌のバランスを整え免疫力を上げてくれる食物繊維や発酵食品、白血球の働きを助け免疫力を上げるビタミン類を多く含む食品を積極的に摂ることが大事です」と飯沼先生はおっしゃいます。

 それではお茶はどうなのでしょうか? 「抹茶は食物繊維やビタミン類を含む優れた飲み物だといえます。また、緑茶全般に関して、免疫に良い“あるもの”を含んでいるのでおすすめしています」と飯沼先生。

 “あるもの”とは、最近さまざまな健康効果が認められ、注目されているカテキンです。 「カテキンの一種であるエピガロカテキンには免疫に良い働きがあることが分かっています。高温でいれるより、水出しで浸出した方がその効果が発揮されやすくなります」(飯沼先生)

 ただ、寒い冬に水出し緑茶ばかり飲んで体温を下げてしまっては逆効果になることも。飯沼先生によると「体温を1度上げると免疫力は数倍上がる」ので、温かい飲み物で体を温めることも大切です。

 他にも、軽く汗をかくウォーキングのような運動や、良質な睡眠などが体を強く保つためには必要です。

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1日2回お茶休憩を

 食事や運動、睡眠と、生活に取り入れやすいポイントを飯沼先生に教えていただきましたが、他に私たちが気を付けることはあるのでしょうか?

 「自律神経を整えることです。私たちの体は、交感神経と副交感神経からなる自律神経に支配されています。交感神経はおもに日中、活動しているときに優位になるのに対して、副交感神経はおもに夜間、リラックスしているときに優位に働きます。この切り替えが一日のリズムをつくる上で大切です」と飯沼先生。

ルピシアだより 2021.2 P3
ルピシアだより 2021.2 P3

 交感神経は緊張や興奮などで簡単に活性化するのに対して、副交感神経は働きが緩やかなので意識してリラックスすることが大切なのだそうです。「この副交感神経が免疫機能を正常にしてくれるためとても重要」と飯沼先生はおっしゃいます。

 「そこでおすすめしたいのが、日中、10時と15時にお茶を飲んでリラックスする時間を設けること。積極的に休んでみることで、自分を“緩める”練習をしてみましょう」と飯沼先生。「安心する」「落ち着く」といった気持ちが大切なので、お茶の種類や飲み方は自分のお好みで。お気に入りのハーブティーでも、ミルクティーでも構いません。

 「リモートワークや自粛生活が続くと、朝起きて日光を浴び、体をリセットすることも難しくなり、一日のリズムが崩れやすくなります。そこで1日2回のお茶の時間を取り入れてリズムをつくることが大事です」(飯沼先生)

最大の敵はストレス

 お茶はリラックス効果があるだけでなく、生活リズムを整え、その成分で私たちの体を守ってくれることが分かりました。

 ウイルスと共存する生活が長きにわたると、心配されるのがストレスの与える影響です。ストレスこそが健康維持の最大の敵。

 「お茶を飲みながら誰かと会話することでもいいし、テレビを観て大笑いしたり、映画を観て涙を流したりしてもいい。私自身はジャズや交響曲を聞きながら、お茶を飲んでリラックスする時間を設けています」(飯沼先生)

 自分なりのストレスを解消する手段を持っておくことは、実は元気を保つことに繋がります。そこに、お茶をうまく取り入れて、この冬を健やかに乗り越えましょう。