
豊かな南の青い山
ニルギリ
世界最大の紅茶生産・消費国インドで、ダージリン、アッサムと並ぶ銘紅茶産地ニルギリ。名産地スリランカの西側に位置し、爽やかな味わいとほのかな甘い香りの余韻が特徴。和洋を問わずお食事やお茶請けにも合わせやすい、誰もがおいしいと思える風味で親しまれています。

南インド最大の紅茶産地
ニルギリとは?
「ニルギリ」は、世界最大の紅茶生産・消費国であるインドのダージリンやアッサムと並ぶ、南インドを代表する紅茶の名産地。セイロンティーの産地として知られるスリランカの西側、南インドの山岳エリアに位置するニルギリの茶園は、西ガーツ山脈の南部ニルギリ丘陵の高地およそ1,000~2,500mエリアに点在しています。
低地では主にCTCなど、高地では伝統的なオーソドックス製法の紅茶を中心に製造され、特に標高の高いエリアでは1~2月の冬の季節風による冷たく乾いた風によって、茶葉がゆっくりと成長し風味が凝縮。柑橘などの果実や高山に咲く花々を想起させる、豊かな芳香と爽やかな味わいを持つ高品質なお茶が製造され、「香りの紅茶」として世界中の紅茶ファンから愛されています。

12年に一度、幻の花が咲く
「青い山」
現地タミル語で「青い山」を意味する「ニルギリ」。そう呼ばれる理由は2つあります。1つは、平地から見た山々が青いもやに包まれて見えること。もう1つは、ニルギリの固有種で12年に一度開花するという幻の花「ニーラクリンジ」が山一面を青く染めることに由来します。近年では、2006年と2018年に開花した報告が残されています。
古くからの土着的文化が今も色濃く残る南インドの中でも、ニルギリ周辺の山岳エリアは、先史時代より人々が生活してきた遺跡が残されている特別な土地。12世紀頃にはインドの美と豊穣、幸運と繁栄を司るヒンドゥー教の女神〝ラクシュミー〟を祀る聖地として知られました。また、19世紀以降のイギリス植民地時代に、熱帯地方でありながら高山エリア特有の冷涼で過ごしやすい気候から、山岳リゾート地や高原別荘地として開発されました。同時にヨーロッパ原産の野菜の栽培地として、またコーヒーや紅茶のプランテーションとしても丘陵地帯の開墾が進められました。


多様性と独自性が
ニルギリ最大の魅力
世界的に名高いダージリンやアッサムなどインド北東部産の紅茶は、伝統的に西ベンガル州のコルカタのオークションを経由して世界中に届けられます。しかし南インドに位置するニルギリは、古代から知られるチェンナイ、コーチンなどの貿易港にて、特産品のスパイスや果実とともに出荷されるため、売買や出荷についても独自のルールが守られています。
また、19~20世紀の英国統治時代、世界中から集められた有用植物の生育調査などが進められた経緯から、品種改良の技術や自然科学の調査が進み、お茶に関しても特有の製法や研究が進んでいるという背景があります。
そのため、ダージリンやアッサムとは異なるオーソドックスタイプの紅茶、緑茶、白茶、烏龍茶など多彩なプレミアムティーが製造されるなど、多様性と柔軟性に富むのもニルギリの茶園の特徴といえます。
ニルギリの魅力を再発見
再注目を集める歴史的名産地
世界最大の紅茶生産・消費国インドで、ダージリン、アッサムと並ぶ三大産地に数えられるニルギリ。主な旬は1~2月の冬のクオリティーシーズンです。季節風(モンスーン)による冷たく乾いた風によって茶葉がゆっくりと成長することで、風味が凝縮した高品質なお茶が作られます。
ニルギリの茶業は1830年代に中国から持ち込まれた茶樹の試験栽培にはじまり、1860年代には本格的な商業生産が開始されました。19世紀末に中国のお茶の製造業者による技術指導が行われるなど品質も向上。南インドを代表する名産地となりました。
1947年のインド独立後、多くの茶園が現地の資本に事業売買され、旧ソ連市場などに向けた低価格帯のCTC紅茶やインスタントティーの製造に移行するなど、お茶産地としての低迷期がありました。しかし、現地の農園協会などの技術指導などの努力や市場の変化により、主に2000年代以降は伝統的な製法の紅茶はもちろん、白茶、緑茶など、他産地にない特別な味わいを持つスペシャルティーが注目を浴びるなど、気鋭の茶産地として世界的に再注目されています。



ニルギリの3つのポイント
ニルギリのお茶には共通して感じられる、自由な雰囲気や気風、個性があります。特にクオリティーの茶葉と、インド北東部のダージリン、アッサムや、インド洋をはさんで南東に位置するセイロン(スリランカ)などの茶葉を飲みくらべた時に、ニルギリ特有の果実や花々、ハーブを思わせる「香り」の余韻、南国らしい「明るさ」を持つ風味、透明感とキレのある飲み口の「爽やかさ」などに、明確な個性と魅力が感じられます。

